No.31 2VCOの効果

 今週は、2VCOなど、複数の発振器の効果的な使い方をいくつかあげてみましょう。

普通、2VCOタイプのシンセサイザーでも、完全に独立して波形や音域、音程をコントロールできるものと、一つのVCOの1オクターブ下、2オクターブ下の音をミックスするだけの”サブ・オシレーター”タイプのものがあります。後者では波形はいくらか選択の余地があっても、音程を5度間隔にしたり、微妙にずらしたりすることはできないので応用範囲は狭くなります。

 まずサブオシレータータイプでも可能な音作りですが、2VCOの一般的に言われる利点は音が厚いということです。音色的にも”量感”が欲しい場合ですから、代表的な例としてシンセベース音があげられます。このような低い音域では二つのVCOを2オクターブも離してしまうと、一つの音として溶けないので16’と32’という具合にオクターブ間隔にセットします。

 波形は16’に倍音の豊かなパルス波を選び、0.5〜1Hzのサイン波でパルス・ワイズ・モジュレーションをかけ、32’は矩形波を選びましょう。ボリュームのバランスを取れば、エンベロープの設定次第でファンキーなディスコ風のベース音から、ジェネシスがよく使うペダル・ベースまでカバーできるでしょう。シンセのソロなどは厚い音が欲しいときが多いのですが、逆にバイオリン音などは鋸歯状波にオート・ベンド少々とディレイ・ビブラートをかけた1VCOの方が真実味があるし、フルートなども1VCOで十分です。

 さて、この2VCOならではの音色ですが、例えば鉄琴のような音や、マリンバ風の音色には2オクターブ離し、両方とも矩形波を選んで下さい。とくに変音域の金属的な響きが欲しいときは、上の方のVCOを9度などオクターブ以上の不協和音にし、こちらの音量を大きめにすると面白いでしょう。

 この場合、下のVCOを基準とし、上のVCOはある不協和な変次倍音を強調したことになるので、ユニークな音色となるわけです(図)。

 このほかにも2VCOを同じ音域にセットし、音程をわずかにずらす方法もポピュラーで、そこに生じるうねりが、エフェクターのコーラス効果と同様になります。

文・岩崎 工

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