No.33 ポリフォニック・キーボードとオート・アルペジオ

 最近では、ポリフォニック(和音を出せる)シンセサイザーが増えてきましたが、この方式も3つのタイプに分類でき、それぞれ長所、短所があります。

 まず、全ての鍵盤から同時に音を出せる全音ポリフォニック・タイプですが、実は1VCO、1VCF、1VCA、1EGで構成されている簡略型がほとんどです。これらの機種は、いわゆるストリングス・アンサンブル等キーボードの発展型で、音源が一つで、各鍵盤が同じEGでしか動かないので、あまりバラエティーに富んだ使い方はできませんが、低価格なのが魅力です。

 同じ全音ポリフォニックでも、鍵盤の数だけVCO、VCF、VCA、EGを持つ高級機種もあります。特にそれぞれ独立したEGを持っているものは、鍵盤を押さえる時間をずらせば、その通りに反応するのでとても自然な効果が得られます。

 例えば、リリースのやや長いハープ風の音を作っておき、鍵盤をグリッサンドした時の効果などは、8VCO程度のポリ・シンセでは再現できないものです。時間差によるEGの反応をいかした使い方も有効ですが、ポルタメントが使えないというデメリットもあります。このタイプの銘器として、KORGのPS−3200とポリ・ムーグがあげられるでしょう。

 3番目はマイコンの機能を利用したタイプで、最近はこれが最もポピュラーです。だいたい、4VCOから16VCOの範囲内ですが、マイコンが鍵盤をスキャニング(走査)し、どの鍵盤が押されたかを即座に読み取り、そのピッチ(音程)でVCOを鳴らす、という方式です。

 この場合、VCO数が限られているので、各音源の精度を高くすることができ、機種によっては一音ずつの音色を変える事さえできます。中には、押さえた和音を自動的にアルペジオで演奏させるオート・アルペジオを装備しているものもあり(スピードはLFOで決定)、マイコンの利点を最大限に活用した合理的なタイプと言えます。現在プロ・ミュージシャンが最も多く愛用しているプロフィット5オーバーハイムローランドJP−8等は、みなこのタイプのキーボード方式を採用しています。

文・岩崎 工

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